ボールペンをギフトに選ぶとき、少し良いものをと海外のブランドペンを考える方も多いと思います。そこで、ギフトによく選ばれるボールペンの海外ブランド3つとその歴史や特徴についてまとめました。
CROSS[クロス]
クロスは米国で最も長い歴史を誇り、機能の分野で26以上の特許を取得し筆記具に革命的な影響を与えたブランドです。
CROSSの歴史
1846年、英国でペンシルを製造していたリチャード・クロスとエドワード・W・ ブラッドバリーはアメリカに渡り事業を開始。当初は壮麗な装飾を施した金銀のペンシル用ホルダーを製造していました。
後にCROSSに大きな影響を与えるリチャード・クロスの長男、アロンゾ・タウンゼント・クロスが生まれた年でもあります。
1873年、アロンゾが初の特許を米国で取得しペンシルケース、ペンホルダーを発明します。
1880年代にかけては、望遠鏡のように伸縮自在な「望遠鏡式ペンシル」や、ボールペンの先駆けとなる「スタイログラフィックペン」、シャープペンシルの原型となる「繰り出し式ペンシル」を発明し、米国で26、英国で7つの特許を取得しました。
1880年、ロードアイランド州に蒸気エンジンを採用した工場を設立。
1889年、CROSS初の万年筆の製造。その精巧なデザインから比類ないという意味のPeerlessと名付けられアメリカで大ヒットします。
1916年、アロンゾが引退。そのため、2代に渡りCROSSに従事していたボス家のウォルター・R・ボスがCROSSを買収。ボス家はその後のビジネスを引き継ぎクロスはさらに洗練されたデザインの筆記具を次々に開発していきます。
1946年、クロスの代表的商品「センチュリー」が登場。その細身でエレガントなフォルムと円錐形のコニカルトップはその後のCROSS製品のシンボルとなります。
1949年には使用年数にかかわらず生涯筆記具の基本機能を保証する「機構上永久保証制度」を導入。高い品質を象徴する制度として現在にも引き継がれています。
1970年、初の海外販売拠点として日本法人を設立。それ以降クロスは世界各局に拠点を広げていきました。
2015年、創業170周年を控えたCROSSはブランディングを刷新します。ブランドロゴはブラックとゴールデンイエローを基調とし、ライオンをシンボルとしました。
2016年、創業170周年を迎え、現在に至るまでアメリカを代表する筆記具メーカーとして愛されて続けています。
CROSSの特色
CROSSの特徴は、なんといっても機構上永久保証制度ではないでしょうか。自社製品の品質に自信をもち、優れた技術をペンに注いできた高いクラフトマンシップの表れとも言えます。
CROSSを代表する機構として「セレクチップローラーボール」というテクノロジーがあります。これは対応モデルのペンに内蔵されているリフィルを変えることによりペン先の好みを選べるというものです。
コーポレートギフトとして親しまれていたという歴史もあり、「セレクチップローラーボール」にはギフトとして相手の好みを考え選び、贈る楽しさも込められています。
CROSSのペンはオバマ元大統領が愛用していたことでも知られています。さらにトランプ元大統領も署名に使用しており、ポーラス芯を用いて力強いサインをしています。
PARKER[パーカー]
パーカーはアメリカで生まれ、イギリスでエリザベス女王とウェールズ公チャールズ皇太子から「ロイヤルワラント」の称号を授かった英国王室御用達の筆記具ブランドです。
PARKERの歴史
1888年、創業者であるジョージ・サッフォード・パーカーがPARKERを設立し、翌年から万年筆の販売を開始。
1894年、万年筆のインク漏れを防止するシステム「ラッキー・カーブ」を発明し、筆記具業界に飛躍的な進歩をもたらします。
1914年、第一次大戦中には水に浸すと固形インクが溶けて書けるようになる「トレンチペン」を開発し、軍用品としてアメリカ旧陸軍省へ供給。戦後の1921年にはフラッグシップモデルの万年筆「デュオフィールド」を発売。当時は珍しかった色鮮やかなオレンジ色のカラーから「ビッグレッド」とも呼ばれました。
1945年、第二次世界大戦が終結。ダグラス・マッカーサーが日本の降伏文書の調印に「デュオフォールド」を使用しています。
1954年、パーカー初のボールペン「ジョッター」が生まれ、1957年にはPARKERを象徴する矢羽クリップが正式にブランドアイコンとなりました。
1962年、ヨーロッパ本部がロンドンに置かれていることもあり、エリザベス女王から「ロイヤルワラント」の称号を授かり、英国王室御用達の筆記具ブランドとなります。
1987年、イギリス資本が入ったことにより、本部がイギリスに移転。イギリスの会社となりました。
1990年、ウェールズ公チャールズ皇太子からパーカー2つ目となる「ロイヤルワラント」の称号を授かります。
1993年にはアメリカにある世界最大の一般消費財メーカーであるP&G傘下のジレット社に買収されます。
2000年にはニューウェル・ラバーメイド・グループのオフィス用具部門の世界最大の筆記具ブランドグループ「サンフォード」の傘下となり、2009年にはイギリスにある工場が閉鎖され、生産拠点がフランスとなりました。
PARKERの特色
PARKERは「優れたペンを作り上げることは常に可能である」というジョージ・サッフォード・パーカーの言葉のもとに革新的な筆記具を作り続けています。大企業の傘下となった今でもPARKERブランドのクオリティ(品質)、クラフトマンシップ(細部へのこだわり)、イノベーション(革新)は引き継がれており、英国王室に認められた証であるロイヤルワラントを保持し続けているのが何よりの証明です。
デザイン面ではそのシンプルで美しいデザインに加え、ブランドアイコンである矢羽クリップにより胸ポケットに挿してあってもひと目でPARKERだとわかります。
創業から130年以上経った現在でも「世界で最も愛されているペン」として世界中で親しまれており、日本でも海外ブランドのペンといえばPARKERをイメージする方も多いです。
WATERMAN[ウォーターマン]
WATERMANは世界で初めて毛細管現象を利用したペン先を開発し万年筆に革命を起こしたメーカーです。
WATERMANの歴史
ニューヨークで保険外交員をしていたルイス・エドソン・ウォーターマンは、とある大口契約を交わす際にペンのインク漏れが原因で契約を逃していまいます。この経験から1883年、現代の万年筆にも受け継がれる「毛細管現象を応用した万年筆」を世界で初めて開発することとなります。
1884年、特許を取得しIdeal Pen Companyを創業。1888年に社名をL.E.WATERMANへ変更。
1895年、丸善(現、丸善雄松堂)がL.E.WATERMANの万年筆輸入販売を開始。現在主流の泉式万年筆販売としては日本で初めての流通となります。
1899年、「スプーン・フィールド」供給システムを開発。このシステムによりインク漏れを防ぐことが可能に。
1900年、「L.E.WATERMAN」のペンがパリ国際博覧会で金賞を受賞。フランスでの知名度が高まりました。
1904年、世界初のクリップ付きのキャップを開発。インク漏れが減ったことでペンを携帯できるようになります。
1926年、L.E.WATERMANの代理店であるJules Isidore Fagardがフランスに「Jif-WATERMAN」を設立。同時にフランスでもWATERMANの製作が開始されます。
1927年、「Jif-Waterman」の技術者であったM.Perraudがガラス製のインクカートリッジを開発。
1954年、アメリカ法人であるL.E.WATERMANが倒産。残されたフランス法人がメインとなります。ここからのWATERMANは現代までフランスの会社として「フランスの誇り」を大切にしており、ブランドの根源をパリとしています。
また、ブランドの目指す場所も当初の「インクが漏れないペン」から「ペンを自己表現のツールへと昇華」へシフト。フランス人工業デザイナーのアラン・カレを専属デザイナーに起用するなどパリの豊かな文化を取り入れ、エレガントなペンを次々と世に送り出してきました。
この後、PARKERと同じくアメリカの世界最大の筆記具ブランドグループ「サンフォード」の傘下となるのですが、フランス、パリブランドの誇りを持ち続け、今もすべてのペンをフランスで製作しています。
WATERMANの特徴
アメリカで生まれ、パリで育ち、今はすべてのペンがフランス製のウォーターマン。「ライティング・ジュエリー」と称されるエレガンスでラグジュアリーなデザインは万年筆だけでなくボールペンにも取り入れられています。
デザイン面に加え、現代の万年筆にも取り入れられている毛細管現象応用技術、クリップ付きキャップ、インクカートリッジなど現代の万年筆の基礎を築き上げたという点でも、WATERMANというブランドはとても価値の高いものと言えます。上質さ、高級感に重点を置いたペンギフト選びであれば、一番におすすめしたいブランドです。
さいごに
今回は海外筆記具ブランドということで、代表的なCROSS、PARKER、WATERMANをご紹介しました。それぞれのブランドが独自のクラフトマンシップのもとに魂を込めてペンを作っています。ギフトとして選ぶときも各ブランドのことを意識すると、さらに気持ちがこもったギフトになるかもしれません。