ギフトに日本の二大筆記具ブランド!それぞれの歴史や特色もご紹介

日本製

前回は外国のブランドCROSS、PARKER、WATERMANをご紹介しました。

ギフトボックス海外ブランドボールペン3つの歴史と特徴【イギリス・アメリカ】

どれも高いクラフトマンシップをもったブランドでしたが、日本のブランドも負けてはいません!今回は国内の2大筆記具ブランドをご紹介します。

PILOT[パイロット]

パイロット

パイロットは純国産万年筆を生み出した日本の総合文具ブランドです。「消せるボールペン」フリクションブランドでも世界的に知られています。

PILOTの歴史

東京商船大学出身で同校の教授であったPILOT創始者の1人である並木良輔は、製図の際に烏口を使用していました。しかし、ペン先の減りが早く、何度もインクを付けなければならないところを不便と感じていました。もっと便利にならないかと考えた末、1909年、軸にインク貯蔵機能を持った「並木式烏口」を開発し特許を取得します。

その後、烏口よりも万人に使われている便利なペンとして万年筆に興味を持ち、教鞭を取りつつ万年筆のペン先開発を始めました。減りやすいペン先をどんな素材で作るかを考え、北海道で天然イリドスミン鉱石を見つけ6年かけて加工に成功します。ところが、ペン先完成間近というところで研究資金が底を付いてしまいました。

そこに手を差し伸べたのが、もう1人のPILOT創始者である和田正雄です。並木と和田は東京商船大学の旧友であり、和田は実業家でした。膨大な資金援助を受けた並木は世界に誇る純国産金ペンを完成させました。それを見た和田は当時行っていた事業をやめ、並木とともに万年筆事業をすることに決めます。

1918年、2人は東京日本橋に株式会社並木製作所を設立。船舶用語で水先人を表し、業界を先導する意味を込めた「パイロット」と沈まない不屈の精神を表す「浮き輪」を商標に、純国産万年筆の生産販売を始めました。

このときライバル企業のセーラー万年筆が先に船に関係する名前を付けており、パイロットという名前はその対抗意識の表れともいわれています。

1925年には堅牢性の高い漆を使用したペン軸「ラッカナイト」を開発し、日米で特許を取得。ラッカナイト軸に日本の伝統工芸である蒔絵を施した万年筆が誕生します。

翌年の1926年、のちの人間国宝である蒔絵師の松田権六氏をはじめ多くの作家を招き、蒔絵万年筆の製作にかかります。その作家集団はのちに「国光会(國光會)」と呼ばれ、世界に誇る蒔絵を現在まで受け継いでいます。

同年、並木と和田は海外を視察し、ニューヨーク・ロンドン・上海・シンガポールに支店と販売拠点を開設。また、欧米への蒔絵万年筆の輸出を開始しました。その実用性と美しさから世界各国で注目を集めます。

1927年、シャープペンシルの製造と販売を開始。

1930年、イギリスを代表する高級ファッションブランドであるダンヒル社と欧州地域の販売代理契約し、「ダンヒル・ナミキ」が誕生。パイロットの評価は世界的に揺るぎないものとなりました。

1938年、社名を「パイロット萬年筆株式会社」に変更します。

1960年頃には油性マーキングペンや高級ボールペンを製造販売。1963年には世界初のキャップレス万年筆を開発、販売し、翌年パリで開かれた国際ギフトフェアで最優秀オスカー賞を受賞します。

その後はボールペンにも力を入れるようになり、耐摩耗性に優れるステンレスチップの製造を開始。また、1965年にはステンレスチップを使用した世界初のボール径0.5mm極細字用ボールペンの製品化に成功。

翌年1966年、ホワイトボードとホワイトボードマーカーの国内初の製造販売を開始。万年筆メーカーから総合筆記具メーカーへと着実に進化していきました。

その後、現代の日本人にあった日本の文字のための万年筆である「カスタム」シリーズや、水性ボールペン、磁気による筆記を可能とするパネル、ボールペンとシャープペンシルが1本になった多機能筆記具、ゲルインクボールペンなど多数の商品を開発し販売してきました。

そして1989年、社名を「株式会社パイロット」に改称します。海外拠点を更に増やし、2002年には株式移転により親会社となる「パイロットホールディングス」を立ち上げ、2003年に併合し「株式会社パイロットコーポレーション」となりました。

2006年、こすると消えるボールペンでおなじみの「フリクションボール」が発売。2008年にはなめらかに書ける低粘度油性ボールペン「アクロボール」が発売されました。

そして2018年には創立100周年を迎え、現在に至るまで多くの人に愛用されています。

パイロットの特色

パイロット万年筆

パイロットは万年筆から始まり、総合筆記具メーカーとなるまでにさまざまな副産物も生み出しています。ペン先に用いたレアメタル加工技術から、宝飾製品や、幼児玩具のメルちゃんシリーズ、産業資材など筆記具・文具のみならず幅広い分野で活躍しています。

また書くことにこだわりをもった会社ということもあり、ペン習字通信講座なども行っています。

万年筆、ボールペン共に低価格なものが主流となった現在でも、そのクオリティは成熟し研ぎ澄まされたものを感じます。海外にもブランド名が浸透しているので、日本人はもちろん海外の方へのジャパニーズギフトとしても贈りやすいブランドです。

三菱鉛筆[みつびしえんぴつ]

三菱鉛筆

三菱鉛筆は日本で初めて国産鉛筆を生み出した総合文具メーカーです。

三菱鉛筆の歴史

三菱鉛筆創業者の眞崎仁六は、1878年にパリで行われた万博で鉛筆というものを初めて目にし、大変感動しました。そして鉛筆を日本でも再現しようとさまざまな研究と努力を重ね、ついに日本初の鉛筆工業生産に成功しました。

1887年、現在の新宿区に眞崎鉛筆製造所を創業。

1901年には初の国産鉛筆「局用鉛筆」を今の総務省・日本郵政・NTTグループである逓信省の御用品として採用されました。局用鉛筆の硬度は1号・2号・3号の3種類があったことと、眞崎家の家紋がミツウロコであったことを合わせて図案化し、三菱のマークが生まれました。三菱のマークであるスリーダイヤと「三菱」という商標は1903年に商標登録されており、三菱財閥が商標登録する10年前には既に三菱(鉛筆)が存在していたことになります。

※三菱鉛筆と三菱財閥(三菱グループ)は別の会社です。

この後、2度に渡る世界大戦の中、今まで輸入していた鉛筆の供給が止まったため、鉛筆は国内メーカーが供給源となり、三菱の他にも多数の会社が鉛筆を製造しました。終戦後、国内生産された鉛筆を輸出することとなったのですが、一部の業者が粗悪な品質の鉛筆を生産していた影響で海外での日本製鉛筆の評判は地に落ちてしまいます。

1952年、三菱は三菱鉛筆へと社名を変えました。そして1953年に鉛筆の海外視察ということで欧州へと旅立った三菱鉛筆技術部長の数原洋二は現地で日本製鉛筆の評判の低さを知ることとなります。この経験から「名実ともに日本の鉛筆が海外から評価されるためには、輸入品の影響から脱したオリジナリティのある高級鉛筆を開発しなければならない」と強い決意を抱きました。

それに加え、一番の競合メーカーであるトンボ鉛筆の「ホモ」が三菱の鉛筆よりも1本10~20円近く高い価格でも売れていたことから「最高の品質こそ 最大のサービス」という社是のもと、品質の高い高級鉛筆の開発を開始します。

「Bの黒さでHの濃さ」の「世界一の鉛筆」を目指し、粘土の微粒子化の高い技術を活かして、黒鉛と粘土の粒子をより細かく均一にする技術を確立するなど、約5年に渡る開発を重ね、また本体を形成する木材も一から選定し直し、かつてないなめらかな書き味の鉛筆が完成しました。

1957年、本体が決まり、次はデザインということで日本の生活デザインの父とも呼ばれる秋岡芳夫氏をメンバーに加え、輸入品と並ぶ1本50円という価格や、どこともかぶることのない本体のえび茶色、プラスチック製のダース箱といった売り方とuniqueを由来とした「uni」という名称が決まりました。

そして1958年、コーヒー1杯が50円の時代。三菱鉛筆はその1本50円という価格から需要が限られると見込んで製図用鉛筆として売り出すのですが、予想とは裏腹に爆発的な人気を呼びました。1960年頃の高度経済成長の追い風も受け、発売から6年で予定販売数の10倍以上の大ヒットとなりました。

その後シャープペンシルやボールペンが登場し、1965年をピークに国内の鉛筆生産数は減少していきましたが、uniの名称は60周年を迎えた現代にも引き継がれています。

時代に合わせ三菱鉛筆も複数のペンを開発しており、ポスカやピュアモルト、クルトガ、ジェットストリームなどの人気商品を次々に生み出し現在に至ります。

三菱鉛筆の特色

現在も「最高の品質こそ 最大のサービス」という社是のもと製品の開発をしています。
近年のヒット商品である2006年発売の低粘度油性ボールペンのジェットストリームは、筆圧が弱く、油性ボールペンが苦手な開発担当者が軽く書けるボールペンを目指して考案されました。

ペン先の摩擦係数を下げるためにインクの素材を10000通り以上配合するなど1からベストな配合を探し、それに合わせたチップを開発。培ってきた技術がありながらも最高の品質を目指すためにはイチからでも作るという姿勢が、鉛筆を開発していた時代から受け継がれる三菱鉛筆らしさではないでしょうか。

品質はもちろんのこと、実用性もしっかり考えて開発されているので、自分用にはもちろんギフトとして贈る際も安心です。

さいごに

今回は国内筆記具ブランドということでPILOTと三菱鉛筆をご紹介しました。どちらも夢を追いかけ、想いを追求し、それが認められて成長した会社でした。安心感や実用性などを求めるなら、国産ブランドから選んでみてはいかがでしょうか。