【陶器の手入れ・洗い方】お気に入りを長く使うためのひと工夫

【陶器の手入れ・洗い方】お気に入りを長く使うためのひと工夫

お家で過ごす時間が長くなったことで、毎日の料理や食事の時間を豊かにしてくれる陶器のうつわが人気を集めています。プラスチックや磁器にはないあたたかみが感じられる陶器ですが、お手入れの仕方によってはシミやニオイがついて取れなくなってしまうことも……

今回は、お気に入りの陶器を長く使うためのお手入れ方法についてご紹介します。これから陶器のうつわを購入しようと思っている方、日々のお手入れでお悩みの方はぜひご覧ください。正しいお手入れの方法がわかれば、お気に入りのうつわとの出会いがもっと素敵なものになりますよ。

陶器と磁器の違い

一般的に「やきもの」と呼ばれるうつわは陶器と磁器ですが、これらは使われている素材が異なります。陶器で主に使われているのは陶土と呼ばれる「粘土」、磁器に使われているのは長石、けい石などの「石」を細かく砕いた粉です。この違いから陶器は「土もの」磁器は「石もの」と呼ばれることもあります。陶器は磁器に比べると粒子が粗く水を吸いやすいため、長く使うためにはお手入れの方法に気を使う必要があるのです。

陶器磁器
素材粘土
素地の質感ざらりとした土の触感つるんと滑らか
粒子粗い細かい
吸水性高いほとんどない
汚れ・ニオイ移りしやすいしにくい

ご家庭で使われている食器としては、お手入れがしやすい磁器の方がメジャーです。陶器はお手入れに手間がかかりますが、長く大切に使い込んだうつわにはその分愛着が増していきます。

陶器を長持ちさせるお手入れ・洗い方

陶器を長持ちさせるお手入れ・洗い方

水分を吸収しやすいという陶器の特徴は、シミなどの汚れがつきやすくなる原因でもあります。きれいな見た目が長持ちするように、きちんとメンテナンスをしてあげましょう。

使い始める前に「目止め」をする

新しく陶器のうつわを買ってきたら、使い始める前にまず「目止め」をしましょう。目止めとは、陶器の表面の凹凸をコーティングして水分や油を吸収しにくい状態にしてあげることです。新しい食器はすぐ使いたくなりますが、このひと手間を加えることで買ってきたときの風合いを長く楽しむことができます。

用意するもの

・お米のとぎ汁 ※小麦粉や片栗粉でも代用可

・うつわが入る大きめの鍋

とぎ汁に含まれるデンプンが粗い粒子の凹凸に入り込むことで、汚れやニオイが染み込むのを防ぐという仕組みです。小麦粉や片栗粉で代用する場合は、見た目でとぎ汁と同じくらいの濃度になっていればOK(水1リットルに対し、だいたい大さじ1~2杯程度)。さっそくやってみましょう!

目止めの仕方

  1. うつわを鍋に入れたら、お米のとぎ汁をうつわに被るくらい注ぎます。
  2. 火にかけて沸騰させたら、うつわが焦げ付かないように弱火で15分~20分煮沸します。
  3. 火を止めて、そのまま冷まします。
  4. 水でよく洗ってぬめりを落とし、十分に乾燥させます。

うつわの使用頻度にもよりますが、半年に1回くらいの間隔で定期的に目止めをしてあげるとよりきれいな見た目が長持ちします。目止めをするのが難しい場合は、使い始めの前にきれいな水に数時間浸しておくといいでしょう。

使う前のプラスひと手間

陶器のうつわは、毎回使う前に軽く水にくぐらせるとシミがつきにくくなります。あらかじめ水を吸わせることで、料理や飲み物の色が染み込むのをある程度防ぐことができるのです。温かい料理のときはお湯を、冷たい料理のときは冷水を使うと美味しい食べごろ温度のまま盛り付けることができる効果もあります。シミやニオイの対策としては、濡れふきんでさっと拭くだけでも効果的です。

使い終わった後のお手入れ

使い終わった後の食器は、すぐに洗いましょう。油汚れがついていなければ、なるべく洗剤は使わずに水だけで洗います。洗剤を使う場合は食器用の中性洗剤とやわらかいスポンジを使い、洗剤の成分が残らないようしっかりすすいでください。すすぎが不十分だと、次回使うときにうつわに染み込んだ洗剤の成分が料理や飲み物に溶け出す原因となります。

またシミやカビの原因となるので、つけおきは絶対しないように!料理や飲み物を入れたまま長時間放置するのもNGです。冷蔵庫などで保存するときは別のうつわに移し替えましょう。

風通しの良いところで十分に乾燥させる

洗い終わったら、清潔なふきんで水分を拭き取り風通しの良いところでしっかり乾燥させましょう。水分が残ってしまうとカビの原因となります。深みのあるうつわは、中まで風が通るように菜箸や乾いたふきんをかませてあげるといいでしょう。過度な乾燥はヒビ割れの原因となるので、乾燥機の使用は避けてください。

食洗機・電子レンジ・オーブンは使用しない

食洗機・電子レンジ・オーブンは使用しない

陶器は温度変化に弱いうつわです。オーブンなどによる高温は傷みを早める原因となるため使わないようにしましょう。また食洗機は乾燥時の高温だけでなく、洗浄時の強い水流によって他の食器とぶつかることも破損を早める原因です。これらは一度や二度の使用では見た目に変化がなくても、目に見えない小さなヒビが少しずつ入っていき、ふとした時に割れてしまう危険があります。

中には電子レンジやオーブンに対応した「耐熱陶器」というものもありますが、高温にさらすたびにダメージを与えてしまうのは同じこと。長く使いたいのであれば、なるべく使用頻度を減らす工夫が必要です。また加熱した直後の陶器を濡れタオルなどで掴むと、急激な温度変化によって割れてしまう可能性があります。

茶渋などのガンコなシミ・ニオイの取り方

茶渋などのガンコなシミ・ニオイの取り方

洗剤とスポンジでは落ちないシミやニオイがついてしまったときは、気づいた段階でなるべく早く対処してあげましょう。素地の奥深くまで汚れが染み込んでしまうと、落とすのが非常に難しくなります。またクレンザーや金属タワシなどでゴシゴシこすると表面に細かな傷ができ、余計にシミがつきやすくなってしまうため注意してください。

重曹を使う方法

重曹を使う方法

油染みや茶渋などは酸性の汚れなので、重曹で落とせます。汚れが気になる部分に重曹を振りかけ、10分程度おいてから優しくこすりましょう。粉のままの重曹はクレンザーなどと同じ研磨剤としての働きをするので、力を入れすぎず優しく洗うようにしてください。

塩を使う方法

塩を使う方法

茶渋汚れは塩でこすり洗いすることもできます。塩を汚れに振りかけたら、湿らせた柔らかいスポンジでこすればOK。塩は口に入れても安心なので、成分の染み込みを心配しなくて済むお手軽な方法です。

レモン汁(クエン酸)を使う方法

レモン汁(クエン酸)を使う方法

水垢やニオイがついてしまったときは、レモンを絞った水で2~3回煮沸してみましょう。レモンがない場合は市販のクエン酸を使ってもOK。酢もレモンやクエン酸と同じ酸性ですが、逆に独特のニオイが染み付いてしまうことがあるので使う場合は気をつけてください。

レモンの煮沸でニオイが落ちない場合は、重曹水を使いましょう。重曹を溶かした水に半日ほどつけ置きしたら、重曹の成分がうつわに残らないようにしっかりすすぎます。十分乾かしてもニオイが取れていなければ、重曹水でのつけ置きを2~3回繰り返します。

漂白剤を使う方法

漂白剤を使う方法

重曹やレモンで落ちないガンコなシミやカビには、漂白剤を使いましょう。塩素系漂白剤は非常に強力な洗浄作用がありますが、その代わりうつわ本来の色も落ちて風合いが変わってしまう恐れがあります。また、うつわにアルカリ性の汚れが残っていると有害なガスが発生することもあるためおすすめできません。漂白剤を使う場合は「酸素系漂白剤」を使うようにしてください。

(※メーカーによっては酸素系漂白剤の使用も推奨していない場合があります。取扱説明書などがあれば事前に漂白剤が使えるか確認しておきましょう。)

酸素系漂白剤を取扱説明書の分量に従って水に溶かしたら、うつわをつけ込みます。成分が奥まで浸透しないよう、つけ置き時間は数十分~1時間程度にしておきましょう。取り出したうつわは十分に水ですすぎます。漂白剤を使っても落としきれない汚れは素地の奥深くまで入り込んでしまっている可能性が高いので、残念ですがそれ以上落とすことはできないと考えましょう。

風合いの変化も陶器の楽しみのうち

風合いの変化も陶器の楽しみのうち

どんなに気をつけていても使っていくうちに見た目は変化していくものですが、使い方やメンテナンスの仕方によってその変化はそれぞれ異なります。そこも含めて「育てるうつわ」としての醍醐味ですので、ぜひ数カ月後、数年後の経年変化をお楽しみください。

さいごに

陶器のうつわを長く楽しむための使い方やお手入れ方法についてご紹介しました。陶器は一度カビやシミがついてしまうと、もともとの風合いを損なわずに落とすのが難しいものです。日頃からきれいな状態をキープできるように意識して使いましょう。

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